バー

バーは古代エジプトにおける人のたましいそのものであり、魂を運ぶ人面鳥のことでもあります。

(目次)
  1.姿形
  2.由来
  3.能力考察
 

1.姿形

古代エジプトにおいて人間の魂は、

  1. レン(名前)
  2. バー(魂)
  3. カー(精神/生命エネルギー)
  4. シュト(影)
  5. イブ(心臓)

この5つの要素で出来ていると考えられていました。

このうちの、バー(魂)の一形態いちけいたいが、人面鳥の姿をしたバーです。

 

2.由来

バーは、古代エジプト語で魂の意味。

ちなみにエジプトの神聖文字ヒエログリフは発音が未解明なので、バーという言葉も古代とは読み方が違う可能性が高いです。

ここでは説のひとつを紹介しますが、エジプト神話はたくさんのバリエーションがありますので、このあたり興味ある人は本を読むことをお勧めします。


人間の頭をもつわしの姿で描かれるバーは、死ぬ直前になるとやってきて魂と合一ごういつして西に運び去り、死者の国に着くと人間の姿になります。
(冥界の入口は西方にあり、スフィンクスが守っています)

バー(魂)が人の姿に戻ると、別ルートで移動してきたカー(エネルギー)と融合ゆうごうしてアク(思考)が復活し、人間は死者の国でセカンドライフを満喫まんきつできるようになるのです。

このアクは、お墓で祈ったり手紙を置くと子孫に助力してくれる、いわゆる祖霊それいとしても登場しますが、墓が荒らされると悪夢や病気などたたりを起こすとも言われます。

ちなみに、適切な呪文を知らないとアクの復活に失敗し、あの世で2度目の死が訪れるそうです。


またバーは、日本人が想像するような実体を持たない霊魂ではなく、肉体があり飲食も行う実体がある存在です。
人間の本性・肉体的な欲求を抜き出したような、人の分身体のひとつとして描かれるのです。

そのため後世では、ファラオは神のバーそのものである。あるいは、神様Aは神様Bのバーであるという解釈がされました。

人間は死なないとバー形態になれませんが、神様の場合はいつでも自由にバーの姿に変身できるのです。


なお、悪人は死後の審判しんぱん(死者の国への入国審査)で心臓を怪物アミメットに食べられてしまい、復活できません。

 

3.能力考察

人間のバーは、基本的に無害な存在です。

死の直後は死者の国に一直線、そこで復活すれば理性も戻ります。
悪人の場合は復活に失敗して消滅しょうめつしますから、現世げんせの人に害を与えることもありません。


危険になるのは、現世の墓が荒らされた時。
この時は死者の国から戻ってきて、悪霊やマミー(自分のミイラを蘇生させたもの)に変身してあばれることがあります。

戦うことがあるとしたら、その時でしょう。
よく映画で、盗掘者とうくつしゃ発掘者はっくつしゃがマミーに追いかけられたり病気で倒れたりしますよね?

悪霊に対して、人は攻撃手段を持ちませんので、出会ったらまず逃げましょう。

実体のある人面鳥形態のバーやマミーであれば、普通に撃退げきたいできる可能性もありますが、
「倒したら中から悪霊が!」という事態になっても困るので、やっぱり逃げるが勝ちです。


気をつけたいのは、本来彼らは神に認められた善人・聖人ぞろいだということ。
聖なる力はあまり効果がないかも知れません。

一応、おまじない的な対抗呪文たいこうじゅもんはあるのですが、悪いのは墓を荒らした人間の方なので、神様も力を貸してくれない可能性が高いです。


最後に。
これは言うまでも無いことかもしれませんが、神様のバーを敵に回すと勝ち目はありません。
とにかく逃げろ!