カーバンクル

正体不明の小動物、カーバンクル。
「赤い宝石」を意味するこの生物は、南米にいるとされたUMA(未確認動物)です。
今回は、宝石ガーネットなど小ネタも交えて解説します。

(目次)
  1.姿形
  2.由来
   【閑話】赤い宝石カーバンクル
  3.能力考察
   【閑話】カーバンクルの生息地
  4.小ネタ
  (1)深紅の聖石ガーネット
 

1.姿形

カーバンクルは、16世紀のスペイン人僧侶センテネラの著書「アルゼンチナ」に登場します。
特徴は「燃える石炭のごとく輝く鏡を頭にのせた小さな動物」で、他は一切不明。

まさしく謎の生物です。

 

2.由来

「伝説って?」「ああ」

カーバンクルは、センテネラが南アメリカのパラグアイで目撃したというUMA(未確認動物)。
そのため、名前は西洋風ですが南米原産の生き物です。

民間伝承ではサルやリスに近いとされ、額の宝石を手にしたものは巨万の富と名声を得るとうわさされました。
この話が広まった後、多くの探検家が捜索そうさくに挑みましたが結局発見されなかった幻の獣です。

また、スペイン人の探検家フェルナンデスは「アルゼンチナ」を読んで、竜の体内、脳の中にあるという宝石ではないかという想像をしました。
このことから「カーバンクルはドラゴンである」と考えたのです。
(「小さな動物」という特徴はどこいった・・・)

【閑話】赤い宝石カーバンクル

カーバンクルは赤い宝石(特に、丸くみがいたガーネット)を指す英語で、ラテン語のcarbunculusカルブンクルスが語源とされます。
カルブンクルスは「燃える石炭」「小さな石炭」という意味。

アルゼンチナの記述にある、「燃える石炭のごとく輝く~」という特徴そのままの意味ですよね。
もしかすると「カーバンクルのごとく~」という記述を翻訳ほんやくした人が、ラテン語にも詳しかったのかも知れません。


さて、あなたは赤い宝石と言われて、何を思い浮かべますか?
真っ先にルビーを思い浮かべたのではないでしょうか。

いまでこそ赤い宝石の代表であるルビーですが、実はヨーロッパではあまり産出しないため昔は知名度が低く、一般的ではありませんでした。

古代の人にとっては、赤い宝石といえばガーネットだったのです。

 

3.能力考察

「ぐっ、ぐっぐぐー、ぐー!」

カーバンクルは、能力はもちろん姿すら不明のモンスター。
特徴も少ないため創作においては自由度の高い便利屋さん。

人気ゲームに登場し知名度が高まってきましたが、見たことも聞いたことも無いという人も多いのではないでしょうか。

ゲームに登場する際にも、その姿・能力はあまりにも多様でつかみどころが無いため、「カーバンクルはこうじゃないと」という固定観念があまりありません。
そのため創作の世界では、額に宝石っぽいものをつけて「これがカーバンクルだ!」と言い張れば、どんな姿・能力で登場させても、みんな納得してくれる・・・と思います。

「だいたいあってる」というやつですね。


そんなカーバンクルですが、能力傾向というものがいくつか存在します。

まずは名の由来となった赤い宝石、ガーネットやルビーにちなんだ能力。
ガーネットは傷除けの護符として使われていた地域がありますし、ルビーはダイヤモンドに次ぐ硬度の宝石。
インドにおいて、ルビーは病気を治す薬になるというわれもあります。
このことからカーバンクルも、守護の力、硬いバリアを張る幻獣であったり、万病に効く薬の原料になるとして登場することが多いです。

もう一つは「見つからない」能力。
すばしっこい小動物であったり、回避能力が高かったり、姿を消せる能力を持っていたりします。

最後は探検家の思い込みをモチーフにして、ドラゴンと関連した能力付けです。
ドラゴンのように数々の特殊能力を持ち、可愛い見た目だけど怒らせると実は強いというものですね。
大きなドラゴンに変身する能力を持っていたりもします。

あなたの想像するカーバンクルは、どんな姿をしていますか?

【閑話】カーバンクルの生息地

パラグアイは南アメリカ中央南部に位置します。
1537年に探検隊が首都アスンシオンを建設して以降、1811年に独立するまでスペインの植民地でした。

パラグアイの場合、脅威となっていた他の狩猟民族や奴隷商人たちに対抗するため、現地のグアラニー人とスペイン人で同盟を結び植民地化が比較的スムーズに行われました。
カーバンクルの目撃者であるセンテネラが渡った16世紀は、そんな植民地時代の幕開けまもない頃です。

現在のパラグアイは居住地や森林、肥沃な土地などほとんどの資源が東部に集中していて、人口の9割以上が東部に住んでいます。
水資源も豊かで水力発電が盛んに行われ、世界でもトップクラスの電力輸出国。
世界最大級のダム、イタイプー・ダムやモンダウの滝が有名です。

また、世界遺産にもなっているイエズス会の伝道所はパラグアイの南東部。
センテネラも、きっとこの近くに住んでいたことでしょう。

西部は乾燥した林や湿地帯で人はほとんど住んでいませんが、鳥類の宝庫でありバードウォッチングのスポットだそうです。

パラグアイでは農業が盛んで、日本人が持ち込んだ大豆の生産量が世界6位(2017年8月時点)にまで発展しているとか・・・。
以外なところで、日本とも関わりがあるんですね。

 

4.小ネタ

(1)深紅の聖石ガーネット

ガーネットはラテン語のgranatumグラナートゥムが語源で「石榴ざくろ」という意味。

「種子」と言う意味のラテン語granatusガラナイツ(グラナタス)が語源だという説もあり、パワーストーン業界だとこちらしが多い模様。

ガーネットの見た目を考えると、果物の石榴が由来であるとした方が素直な気がします。
(ガーネットは、和名も石榴石ざくろいしですしね。)

世界各地で産出するため古くから重用されてきた宝石ですが、電気照明だと黒く見えてしまうため、現代では装飾品としての評価が昔よりも低いそうです。
(薄暗い、火の明かりのもとだとちょうど良いとか。)

硬度が高いため、かつては紙やすりや「金剛砂」という研磨剤の材料にされるなど工業的にも使われてきました。

深紅のアルマンディン・ガーネットが有名ですが、黄緑の石や光の加減で色を変えるカラーチェンジガーネットなどもあり、実は多彩です。

ガーネットは1月の誕生石で、石言葉は真実・友愛・忠実・勝利。
貞操や変わらぬ愛を示す石とも言われます。

再会の約束や友情の証として贈りあったり勝利の護符や傷除けの護符としても用いられており、古くから神聖な石とされてきました。

ガーネットが登場する物語で有名なのは、ユダヤの伝説ノアの箱舟。
ここでは導きの光を放つ石としてガーネットが登場しました。
洪水からノアが助かったのは、ガーネットのおかげでもあるのです。

誕生石を決めて広めたのはユダヤ人の宝石商だとされますが、ガーネットを最初の1月に決めたのは、この伝説を念頭に置いていたからなのかもしれませんね。