ドラゴン(西洋竜)

ドラゴンは、最も人気のあるモンスターのひとつであり、遥か昔より様々なアレンジが加えられてきました。
そのため姿にも豊富なバリエーションがありますが、代表的な3タイプを紹介します。

(目次)
  1.姿形
  (1)4足-ドラゴン型
  (2)2足-ワイバーン型
  (3)無足-サーペント型
  2.由来
  3.能力考察
   【閑話】蛇のシンボル
  4.小ネタ
  (1)実は悪魔?
  (2)ライバルだぞう
  (3)本能的な恐怖
 

1.姿形

(1)4足-ドラゴン型

最も多く見られる基本型のドラゴン。

その姿は、
ワニのような頭に、ヘビのような長い尾をもち、その全身は硬い鱗に覆われていて、コウモリのような翼で空を飛び、体が巨大で足は4本。炎や毒の息を吐き、鋭い爪牙で獲物に襲い掛かる。爬虫類に似るが足のつき方は哺乳類同様の下方型が多い。ツノが生えている場合もあり……。

一言でいうと、羽のあるトカゲの姿です。

(2)2足-ワイバーン型

「腕がないからドラゴンじゃないもん。」
by イギリス貴族

ワイバーンは、腕が無く鷲の足をもつ2足のドラゴンです。
イギリスではかつて、ドラゴンを王家専用の紋章にしていました。
そんな中、どうしてもドラゴンの紋章を使いたい貴族が、代わりに考案したのがワイバーンの紋章だと言われています。

そんなわけで、ワイバーン型ドラゴンはどの神話にも登場しませんし、イギリス以外では普通のドラゴンと混同されています。
ドラゴンのオマージュで生み出されたドラゴソ。それがワイバーンです。

(3)無足-サーペント型

「ラッシャイ!新鮮なドラゴンだよー!」
by 魚屋

サーペントは英語で毒蛇のことを指しますが、その名のとおり足が無い、ヘビの姿をしたドラゴンです。羽も無い場合が多いです。

・・・
いま、「それってヘビじゃないの?」と思いませんでしたか?
実はそのとおりで、ヘビがモチーフのモンスターです。

古代ギリシャでは、架空の(4本足の)ドラゴンだけでなく、爬虫類や魚全般をドラゴン(ドラコーン)と呼んでいました。
そのため、ヘビ型モンスターにもドラゴンと名づけていたのです。


このタイプをワーム型と呼ぶ場合もありますが、ワームはミミズなど長い虫類を意味します。
ドラコーン(爬虫類や魚類)というカテゴリからは外れるため、厳密に言うとワームはドラゴンでは無いとも考えられます。
 

2.由来

「ドラゴン」の呼び名はギリシャ語のドラコーン(にらむ者)が由来であるとされています。
しかし、この言葉は前述のとおり元々は蜥蜴や蛇、魚の呼称として使われていました。
「爬虫類」とか「魚介類」と同じような感覚で、「ドラコーン」という言葉が使われていたのです。

そんな、どこにでもいる爬虫類を指す言葉が、なぜ強大なモンスターになったのでしょうか。

その答えは、古代ギリシャ時代にまでさかのぼります。
かつてのギリシャは、小さな都市国家が分立しており、それぞれ異なる神話やおとぎ話をもっていました。
それが都市間交流が進むにつれて一つの神話にまとめられていき、その過程でドラゴンは様々な同系モンスターや蛇神のいいとこ取りをして、今の姿に統合されていったのです。

数多あまたのモンスター、数多の蛇神の力を継いだ結果、ドラゴンは強力かつ多種多様な能力を手に入れました。
それは原型を超えた力であり、ある意味、神を超えるモンスターに生まれ変わったのです。

 

3.能力考察

「負けることも仕事のうちさ。」

種類豊富なドラゴンですが、基本的に強大な力や特殊能力を満載しています。
例を挙げると、鉄も溶かす炎を吐く、攻撃が効かないほど硬い、人より賢い、魔法を使う、不死身などなど何でもありです。

無敵に見える恐ろしいドラゴンですが、不死能力は負けフラグ最後は英雄に倒されるのもまたお約束。

ドラゴンは、物語のクライマックスで人に恐怖と感動を与える花形モンスターなのです。

【閑話】蛇のシンボル

蛇は世界各地で神聖視され様々な力の象徴となっている生物ですが、蛇のシンボルには良い意味も悪い意味もあります。

たとえば、日本では白蛇は縁起が良いとされている一方で、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の方はイケニエを求める悪役ですよね?
蛇は、同じ文化でも間逆の意味を併せ持っている、扱いが難しいシンボルなのです。

(例:蛇のシンボルが表現するもの)

繁栄(恵雨豊穣、金運) 災害(洪水、川の氾濫はんらん
生命(長寿、多産、転生) 死(暗殺、にえ
知恵 狡猾こうかつ
薬(医術、蘇生、再生) 毒(疫病、呪い)
永遠(完全、円環) 不和(戦争、嫉妬)

こうして見比べると、良い意味と悪い意味が対になっていて面白いですよね。
これらのイメージは、ドラゴンにも引き継がれています。

蛇のシンボルは現代でも良く使われていて、自らの尾をくわえる蛇ウロボロスは永遠を表し、指輪のデザイン等で見られますよね。

また、杖に絡みついた蛇のマークは、医術の象徴・知恵の象徴として医師会や学校のシンボルにも使われています。

由来はどちらもギリシャ神話にあり、杖の蛇が1匹の場合は医術を象徴し、2匹の場合は知恵を象徴します。

蛇が1匹の杖は、死者を蘇生した名医アスクレピオス(蛇使い座の人)の杖。
(詳細はメデューサ参照)
蛇が2匹の杖は、”知恵者”と称されるヘルメス神の杖ケーリュケイオン(カドゥケウス)が元ネタです。

 

4.小ネタ

(1)実は悪魔?

ヨーロッパにおけるドラゴンは、戦争や疫病、悪意、嫉妬を象徴するモンスターです。
キリスト教において、アダムとイヴをそそのかして禁断の実を食べさせたヘビは、レッドドラゴンにして悪魔サタンの化身であるとする説もあります。
(黙示録の赤い獣、666の数字で有名なアレ。)

そんな悪いイメージがあるドラゴンですが、しかし貴族の紋章でよく見かけます。戦乱の時代には、善悪よりも強さ優先のイメージ作りが必要だったのでしょう。

多少ワルっぽい方が強く見えますし、昔の人もドラゴンは悪魔だなんだと否定しつつも、心の中ではカッコいい!と思っていたのかも知れませんよね。

(2)ライバルだぞう

「竜虎相うつ」ということわざがあるように、東洋で竜のライバルと言ったら虎ですが、古代ギリシャにおいても似たような逸話があったそうです。

気になるライバルは、なんと「ゾウ」。

激しい戦いの末、ドラゴンがゾウを絞め殺すことに成功しますが、倒れるゾウの巨体に押しつぶされて、ドラゴンのほうも絶命してしまいます。
まさしく「竜象相うつ」結果でした。

この逸話に登場するドラゴンはサーペント型。屏風に描かれた竜象図も見てみたくなりますよね。

(3)本能的な恐怖

あなたはヘビを怖いと思ったことはありませんか?
「見た目が気持ち悪いから」「毒があるから」人それぞれ怖い理由は違うと思いますが、もしかするとそれは「恐れるのが本能だから」かも知れません。

生物学では人間に限らず、哺乳類の多くは本能的に爬虫類(とりわけ蛇)への恐怖感を持っていると言われます。

ドラゴンは、蛇が由来のモンスター。
西洋においてドラゴンが悪とされるのは、蛇への恐怖心ゆえかもしれませんね。