イルルヤンカシュはヒッタイト神話の蛇神。
ヤマタノオロチと同じくお酒に弱いのが特徴で、ギリシャ神話のテュポーンと関連があるとも言われます。
(目次) 1.姿形 2.由来 3.能力考察
1.姿形
イルルヤンカシュは大ヘビの姿をしたモンスター。
トルコにある世界遺産、ハットゥシャ遺跡の粘土板に記されている存在です。
他文明に登場する蛇神と同様に、イルルヤンカシュも河川の氾濫を蛇に例えていると考えられています。
2.由来
イルルヤンカシュは、ハッティ語で蛇の意味。
イルヤンカ、あるいはルヤンカスとも呼ばれます。
神話に登場するイルルヤンカシュは、いわゆる悪神。
ギリシャ神話の怪物テュポーンと共通点が多いとされています。
登場する物語は2パターンありますが、どちらも嵐神プルリヤシュ(タル、あるいはタルフンナとも言う)と戦って退治されるという結末を迎えます。
まず1つ目のパターンですが、
イルルヤンカシュは嵐神プルリヤシュと戦って一度は勝利するものの、女神イナラシュに招かれた宴で酒を飲み、酔って寝てしまいます。
女神は人間の協力を得て、酔ったイルルヤンカシュを縛りあげました。
そこにプルリヤシュがやってきて、イルルヤンカシュはそのまま嵐神に止めを刺されてしまいます。
2つ目のパターンは、
イルルヤンカシュが嵐神プルリヤシュと戦って一度勝利し、心臓と眼を奪うものの、力を取り戻した嵐神に倒されるというもの。
テュポーンとの共通点が議論されるのは、こちらのお話です。
イルルヤンカシュに負けたプルリヤシュは、人との間に子供を作ります。
プルリヤシュは息子をスパイに仕立て上げ、イルルヤンカシュの娘に婿入りさせて心臓と眼を取り戻しました。
プルリヤシュは満を持してイルルヤンカシュと再戦するのですが、自分の息子がその戦いに巻き込まれてしまいます。
プルリヤシュはためらいますが、息子が「自分を助けるな」と願ったことで決断し、プルリヤシュは全力を出してイルルヤンカシュを倒しました。
酒に酔って倒されるところは、日本の八岐大蛇退治と似ていますよね。
トルコと日本は他にも共通項が多いため、日本人のルーツと言う意見も多いです。
ちなみにプルリヤシュは都市の守り神で、豊穣神の父親でもあります。
プルリヤシュが毎年イルルヤンカシュと戦い、勝てば豊作、負ければ不作という言い伝えもあり、この戦いの物語は、お祭りで朗読されたという説もあるそうです。
3.能力考察
イルルヤンカシュは不作を象徴する水神です。
現代日本ではあまり実感がないかもしれませんが、古代において不作すなわち破滅でした。
不作による飢饉は、大勢の死者を出すのです。
イルルヤンカシュは、単に強いだけ、暴れるだけのモンスターではありません。
存在するだけで世界に飢饉をもたらし、人類を滅ぼしてしまうのです。
逃れられない運命。倒さなければならない人類の敵。
それがイルルヤンカシュです。
まさにラスボスと言ったイルルヤンカシュですが、酒に酔って人間に縛り上げられたり、ライバルの息子に気づかないという、うっかり屋さん。
動きを封じるだけなら、つけ込む隙はたくさんあるかもしれませんね。