ゲームで人気の海竜リヴァイアサン。
元ネタは旧約聖書に登場します。
相方のバハムート(元カバ)と異なり、こちらは最初から恐ろしい怪物として伝承されてきました。
堅い鎧に身を包み炎を吐く、神様公認の最強生物について解説します。
(目次) 1.姿形 2.由来 3.能力考察 4.小ネタ (1)旧約聖書 ヨブ記41章
1.姿形
旧約聖書の怪物リヴァイアサン。
現代では海竜の姿が有名ですが、神学ではワニの一種クロコダイルだと解釈されることが多い生物。
古くは巨大魚やクジラ、ワニの姿で描かれていましたが、時代が進むに従い海蛇やドラゴンの姿でデザインされることが増えていきます。
それでも海に最も親しい船乗りたちは大航海時代(15~17世紀頃)に至るまで、「リヴァイアサンは船の周りを回って渦潮を起こし、船を飲み込むクジラのような怪物である」と、初期の古い姿を信じ続けていました。
しかし中世後期になると、研究者・有識者の間では「リヴァイアサンは他宗教の神や怪物と同一である」との解釈が増えていきます。
たとえば、
- イザヤ書の海の怪物ラハブと同一である
- カナンの伝説に登場する七つの頭をもつ怪物リタンと同一である
- バビロニアの大海母神ティアマトと同一である
- ティアマトが生み出した怪物の一匹である
- ユダヤの伝説に登場する、女性に変身してアダムを誘惑し、男性に変身してイヴを誘惑したドラゴンと同一である
などなど、あれもこれもリヴァイアサンだと解釈されていくのです。
そしてキリスト教では、七つの大罪のうち「嫉妬」を司る悪魔としてリヴァイアサンを位置づけます。
その結果、リヴァイアサンを悪魔の姿で描くことが増えていきます。
1818年、コラン・ド・プランシーの著書「地獄の辞典」では、リヴァイアサンは地獄の海軍提督で第3位の悪魔だとして紹介されました。
一時は悪魔そのものとして聖書の記述とは似ても似つかない姿で描かれることもありましたが、現代においては復権して、おおむね海蛇やドラゴンの姿に戻ってきました。
ちなみにベヒモスとリヴァイアサンは同種の生物で、ベヒモスが雄、リヴァイアサンが雌だという説もあります。
(どっちも雄だという説もあるので注意)
2.由来
リヴァイアサンは旧約聖書に登場する、海を象徴するモンスター。
名前はヘブライ語のレヴィアタンが語源で、ねじれた、渦を巻いた、集まって襞をなすもの、引き出されるもの…などの意味をもちます。
旧約聖書の神様ヤハウェは、天地創造の5日目に生物たちを作り出しました。
その時にリヴァイアサン(海)は、ベヒモス(陸)と二体一緒に造り出されたのです。
(ジズ(空)と合わせて三体一緒という版もある)
旧約聖書のヨブ記、詩篇、イザヤ書などに登場しますが、姿や能力はヨブ記が詳しいです。
イザヤ書は紀元前8世紀頃、ヨブ記は紀元前5~3世紀頃とも言われていますので、少なくとも2000年以上の長い歴史をもち、宗教的にも多くの意味をもっている特別なモンスターなのです。
3.能力考察
神様がベヒモスとリヴァイアサンを創造したとき、神様はその出来を見て、「ベヒモスは最高傑作」「リヴァイアサンは最強生物」だと、思わず自賛したという逸話があります。
ゲームなどではベヒモス(バハムート)とセットで登場し、ベヒモスに次ぐ強さとされることが多いリヴァイアサンですが、本来はベヒモスよりもリヴァイアサンの方が圧倒的に強いのです。
さてそんな最強生物リヴァイアサンですが、どんな能力があるのでしょうか。
元ネタのヨブ記(小ネタ(1)参照)を見てみましょう。
(注:筆者の独自解釈です)
- 人には御せない
- 見るだけで戦意喪失するほどの存在
- 全身の筋肉と構造が美しい
- 恐ろしい歯を持つ
- 防護は二重になっていて、背は盾のようなウロコが隙間が無く密着している
- 下腹は瓦の破片のように鋭く尖ったウロコがある
- くしゃみのように時折、口から光を発する
- 目は曙光が瞬くように、明滅する
- 鼻から煙が出ている
- 特に首の筋肉がスゴイ。超コワイ
- 神に造られた全生物の頂点、王である
【攻撃】
- 息は炭火がおこるほど高温で、口から炎を出す
- 海を沸騰させ、通ったあとが光る道のようになる
【防御】
- 心臓は石のように堅い
- どんな武器も効かない。鉄の武器では藁のように頼りない
- 動くだけでも衝撃(高波)が起き、戦うどころじゃなくなる
海の怪物であり渦を巻くという名前の意味から、水を使って船を沈める話があるのか・・・と思いきや、ゴジラのような火炎放射攻撃なのはちょっと意外ですよね。
恐ろしいリヴァイアサンですが、実はベヒモスと共に世界が終わる「最後の審判の日」に人々に食べられる・・・非常食になる運命だというお話もあります。
言い換えると、最後の審判が来るまでは不死を約束されているということですが、盛者必衰を感じさせますね。
4.小ネタ
(1)旧約聖書 ヨブ記41章
リヴァイアサンに関する記述は、旧約聖書のヨブ記41章にあります。
wikisourceのヨブ記(口語訳)から引用していますが、ここでのリヴァイアサンは「わに」と訳されています。
- あなたはつり針でわにをつり出すことができるか。糸でその舌を押えることができるか。
- あなたは葦のなわをその鼻に通すことができるか。つり針でそのあごを突き通すことができるか。
- これはしきりに、あなたに願い求めるであろうか。柔らかな言葉をあなたに語るであろうか。
- これはあなたと契約を結ぶであろうか。あなたはこれを取って、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。
- あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。
- 商人の仲間はこれを商品として、小売商人の間に分けるであろうか。
- あなたは、もりでその皮を満たし、やすでその頭を突き通すことができるか。
- あなたの手をこれの上に置け、あなたは戦いを思い出して、再びこれをしないであろう。
- 見よ、その望みはむなしくなり、これを見てすら倒れる。
- あえてこれを激する勇気のある者はひとりもない。それで、だれがわたしの前に立つことができるか。
- だれが先にわたしに与えたので、わたしはこれに報いるのか。天が下にあるものは、ことごとくわたしのものだ。
- わたしはこれが全身と、その著しい力と、その美しい構造について黙っていることはできない。
- だれがその上着をはぐことができるか。だれがその二重のよろいの間にはいることができるか。
- だれがその顔の戸を開くことができるか。そのまわりの歯は恐ろしい。
- その背は盾の列でできていて、その堅く閉じたさまは密封したように、
- 相互に密接して、風もその間に、はいることができず、
- 互に相連なり、固く着いて離すことができない。
- これが、くしゃみすれば光を発し、その目はあけぼののまぶたに似ている。
- その口からは、たいまつが燃えいで、火花をいだす。
- その鼻の穴からは煙が出てきて、さながら煮え立つなべの水煙のごとく、燃える葦の煙のようだ。
- その息は炭火をおこし、その口からは炎が出る。
- その首には力が宿っていて、恐ろしさが、その前に踊っている。
- その肉片は密接に相連なり、固く身に着いて動かすことができない。
- その心臓は石のように堅く、うすの下石のように堅い。
- その身を起すときは勇士も恐れ、その衝撃によってあわて惑う。
- つるぎがこれを撃っても、きかない、やりも、矢も、もりも用をなさない。
- これは鉄を見ること、わらのように、青銅を見ること朽ち木のようである。
- 弓矢もこれを逃がすことができない。石投げの石もこれには、わらくずとなる。
- こん棒もわらくずのようにみなされ、投げやりの響きを、これはあざ笑う。
- その下腹は鋭いかわらのかけらのようで、麦こき板のようにその身を泥の上に伸ばす。
- これは淵をかなえのように沸きかえらせ、海を香油のなべのようにする。
- これは自分のあとに光る道を残し、淵をしらがのように思わせる。
- 地の上にはこれと並ぶものなく、これは恐れのない者に造られた。
- これはすべての高き者をさげすみ、すべての誇り高ぶる者の王である」。
(出典:wikisource)