ウロボロス

今回は無限の象徴、死と再生、完全を意味する蛇の輪ウロボロス。
錬金術でも多用されるシンボルですが、元はエジプトの聖なる蛇メヘンだと言われています。

(目次)
  1.姿形
  2.由来
   【閑話】ラーと夜旅の仲間たち
  3.能力考察
 

1.姿形

みずからの尾をくわえて輪になっている蛇、ウロボロス。

1匹の蛇が基本ですが、2匹1対で互いの尾を咥えている場合や、かんむりをかぶっていたり蛇ではなくドラゴンだったりと、いくつかバリエーションがあります。

その姿は「死と再生」「不老不死」「永遠」「完全」などを象徴するほか、相反するもの「終わりと始まり」をひとつに統合するシンボルとして使われます。

例をあげると、
古代ギリシャの時代には無限の象徴として地図や星図に描かれていましたし、キリスト教のグノーシス派では世界を呑み込む存在の象徴。錬金術のヘルメス学派では、世界を構成する根源的物質の象徴として使われてきました。


なお、よく似たモンスターにアンフィスバエナという名の蛇がいます。
胴の両端に頭があるこの蛇も、輪のように丸まったポーズで描かれることが多いので間違えないよう注意しましょう。

 

2.由来

名前の由来は、古代ギリシャ語のドラコーン・ウーロボロスあるいは、ウロボロス・オフィス(オピス)。
どちらも尾を飲み込む蛇という意味です。

オフィスは蛇のことですが、ドラコーンの主な意味は「にらむ者」。
蛇の他にも爬虫類や魚、ドラゴンを指す場合があります。


蛇の輪の図案は、インドのナーガラージャ(竜王)アナンタやヴァースキなど、世界各地で同様のものが考案されていますが、ヨーロッパのウロボロスはエジプト神話のメヘンという聖なる蛇が由来と考えられています。

古代エジプトでは、西に沈んだ太陽は地下の冥界を旅して東からまた昇るとされました。
この神話は太陽神ラーが冥界を航海する姿で描かれますが、ここにメヘンが登場します。

メヘンの役目は冥界に住む、闇と混沌の大蛇アポピス(アペプ)からラーを守ること。
アポピスは最初の太陽神でしたがその座をラーに取って替わられたため、ラーを憎んでいる危険な神です。

冥界を通る夜の航海にはメヘンの他にもセト、トート、イシス、マアトといった強力な神々がついていますが、メヘンはラーの周囲をとりかこむようにバリアーのような配置で描かれます。

つまり、太陽神ラーを守る最終防衛ラインがメヘンなのです。

【閑話】ラーと夜旅の仲間たち
  1. ラー
    太陽の町ヘリオポリスの太陽神。
    後に首都がテーベに変わったことで、テーベの太陽神であるアメンと同一視され、ラー=アメンあるいは、アメン=ラーとも呼ばれる。
    さらに後代では、息子のホルス(ホルアクティ)とも同一視された。

    モシャス変身フリークであり、時間帯で姿を変える。
    アポピスとの戦闘は猫形態にゃ。

    アポピスには、たまに負けて日食を起こす。
    死んでもすぐに復活するので、そのまましばらくお待ちください。(花畑)

  2. セト
    「偉大なる強さ」と名に冠する砂漠と風の神。犬の頭を持つ男性の姿。
    荒々しさ、敵対、悪、戦争、嵐、異国の地などを象徴し、砂嵐を起こす困った神だが、キャラバンの守護者でもある。

    レタス好きだったり、ホルス神との戦いで ○○たまたま を失ったり、男神なのに妊娠したりする下ネタ担当。
    詳しく調べるのは、大人になってからにしましょう。

    アポピスの天敵とされる。

  3. トート
    「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」と思わせる神様。
    ラーの補佐役なのに「ラーの心臓」とまで言われている。

    ときあるいは鴇の頭を持つ男性の姿。(ヒヒ猿の場合もある)
    ギリシャに伝わり、ヘルメス神の元になった万能神。

    知恵の神、学問の神、書記の守護者、時の管理者、楽器の開発者、創造神。
    夜の大地を守護し、魔法使いも兼ねている。
    イシスの頭が落とされたとき、代わりに牛の頭を付けて蘇生させたマッドサイエンティスト医療の神でもある。

  4. イシス
    ナイル川の豊穣の女神で王座の守護者。
    ギリシャに伝わり航海の守護女神となったが、中世には魔女の元祖だとされた。

    とびあるいは鳶の翼を持つ女性の姿で、(トートのせいでミノタウロス化したからか)たまに牛角をつけている。
    セトにバラバラにされた夫のオシリスを、冥界の王として蘇生させた経験を持つ。

  5. マアト
    法と真理、正義を司る女神で、ダチョウの羽を頭にかざった女性の姿。

    死者の心臓とマアトの羽を天秤にかけ、罪の重さを量るとされる。
    天秤をもつアヌビス神や、罪人の心臓を食べるアメミットというモンスターとは同僚。

  6. メヘン
    ウロボロスの原型となった、聖なる蛇。
    ラーメンどんぶりの模様っぽくて、装飾と見間違いやすい。
    うねうね模様のはじっこを良く見ると、ちっちゃく地味に頭が付いている。

    ひつぎなどに描かれる際は尾を咥えているが、船上でラーを守る姿では咥えていないので、絶対に輪っかじゃなきゃダメということは無いらしい。

    ラーを守る者(あるいは、時を隠す者)とされるが、あまり活躍しないため能力不詳。
    メヘンと同名の、渦巻き状の双六すごろくがあるが、これは冥界からの脱出(死者の復活)を再現したゲームだとも言われる。

 

3.能力考察

ウロボロスはシンボルとしての扱いが多く、動き出して暴れまわるモンスターとして登場することはまずありません。
どちらかというと書物の挿絵や魔方陣、指輪などアイテムのデザインとして登場し、物語には出てこないのです。

現代の創作においてはモンスターとして登場することもありますが、それでも他の蛇型モンスターに活躍を譲ることが多いでしょう。
代表的なのはウロボロスから派生して生み出されたとされる、世界を取り巻く大蛇ヨルムンガンド(ミドガルズオルム)。
このように、ウロボロスには同系のライバルが多いのです。

ウロボロスの原型であるメヘンについても、守り手であるため攻撃的な描写はありません。
守る者・隠す者と言う表現からは、反撃よりも防御や透明化、敵の察知など回避方面の能力を連想させます。
また、冥界からの脱出は蘇生能力をイメージさせます。