スライム

今回は、ゲームで人気のスライムについてです。
メジャーな神話には登場せず、不定形生物の実在が知られてきた近代になってから登場しました。
今でこそ最弱モンスターというイメージがあるスライムですが、元はホラー作品に登場する恐ろしい怪物だったのです。

(目次)
  1.姿形
   【閑話】実在する不定形生物
  2.由来
  3.能力考察
  (1)攻撃
  (2)防御
  (3)戦術
  4.小ネタ
  (1)不老長寿の薬
  (2)宇宙からの来訪者
 

1.姿形

スライムとは、ぬるぬるどろどろした物質全般を表す英語ですが、その名のとおり、不定形の液状あるいはゼリー状のモンスターです。
登場する作品によってゼリーやブロブ、ウーズと呼ばれることもあります。

 

2.由来

モンスターとしてのスライムは小説が初出で、1930年代と比較的近年になって考案されました。
科学が発展しアメーバなど微生物の存在が知られるまで、不定形生物を想像することが難しかったのです。

事実は小説よりも奇なり、人間の想像を超える生物。それがスライムです。

【閑話】実在する不定形生物

不定形生物で有名なのは、アメーバと粘菌です。
アメーバは水中や地中に生息する原生生物で、大型のものは1mmほどのサイズ。単細胞で不定形のものが多いですが、殻を持つものもいます。
乾燥かんそうすると「シスト」と呼ばれる球型の不活性形態になり、雨が降るまで耐えることができるので、意外と乾燥にも強いです。

粘菌(変形菌)は、研究途中でまだよく分かっていない生物です。
普段土中に混ざっていて目視もくしできませんが、胞子胞子ほうしを作る際に多核細胞が集まって10cmほど(種によっては数メートルの巨大な)子実体を形成します。
庭の地中や枯れ木の中など意外と身近に存在します。

他にはウィルスを食べる免疫細胞、白血球の一種マクロファージなども不定形。
私たちの体内では、スライムたちが日夜ウィルスとバトルを繰り広げているのです。

 

3.能力考察

「ケテリ・リ、ケテリ・リ、ボクわるいスライムじゃないよ」

その黎明れいめい期、スライムは大変恐ろしいモンスターでした。

ラヴクラフトの小説(クトゥルフ神話)に登場する液状生物ショゴスは知性が高く、打撃や火が効かず、巨大で再生能力があり、脳をはじめとした多彩な臓器ぞうきを自在に形成できる、まさに万能生物といった姿で描かれています。

また、1970年代に登場するTRPGゲーム「ダンジョン&ドラゴンズ」においても、打撃が効かず、体液で装備を溶かしてしまう厄介な存在だったのです。

とても強かったスライムですが、時代が下るにつれて急速に弱体化していきます。
ゲーム「ウィザードリィ」や「ドラゴンクエスト」では、序盤のとても弱いモンスターとして登場しますが、これらのゲームが大ヒットした影響で、それまでにあった「スライム=強敵」のイメージを、「スライム=最弱」に塗り替えてしまったのです。(でも、そのおかげで人気者に。)

最近ではスライムの実力がふたた見直されてきていますが、ここでスライムの持つ代表的な能力をおさらいしてみましょう。

(1)攻撃

ドーモ。ドクシャ=サン。スライムです。

スライムの攻撃方法は大きく分けて3つ。
酸で相手を溶かす、中毒させる、窒息させる(し掛かる)です。

【イ】酸攻撃
皆さんは酸が何をどこまで溶かせるかご存知ですか?黄金の鉄の塊金メッキ装備なら遅れをとるはずがないと思っていませんか?

酸のひとつに王水おうすいという酸があります。濃塩酸と濃硝酸を混合したこの液体は、鉄はもちろん金や貴金属も溶かしてしまいます。

確かにガラスや銀、ダイヤモンドなど、王水でも溶かしにくい物質は存在します。
一種類で何でも溶かせる酸は現実にありませんが、この物質を溶かすにはコレ!というように、大抵の物質は弱点となる種類の酸が存在するのです。

アシッドスライム=サンは何でも溶かせる。実際スゴイ。

【ロ】毒攻撃
毒は致死性・即効性が高く、古来より暗殺に使われてきました。種類によっては、触れただけで死んでしまうものも。

その使われ方ですが、現実の生物においても、毒牙や針で直接注入、体表から分泌、毒液を飛ばすなどバリエーション豊富です。
スライムの場合は、体内に蓄積し体表から分泌するパターンが主ですが、天井から垂らしたり、毒ガスを放出するなども考えられます。
不用意に攻撃すると、体内の毒が飛び散って大変危険なのでやめましょう。

ポイズンスライム=サンには触れない。コワイ!

【ハ】窒息攻撃
◆スライム・ボディ・プレス◆
スライム・ニンジャ・クランに伝わる暗殺カラテ技。


スライムは標的の頭上に忍び寄ると、容赦なく飛び掛った。鼻と口を塞ぎ獲物を窒息させるのだ。「オボーッ!」状況判断を怠った哀れなボウケンシャはアンブッシュの餌食となり、ハイクを詠むこともできなかった。
「ハアーッ…」ザンシンを決めたスライムは深く息を吐く。
さあ、スシの補給だ。


スライムカラテは何より強い。いいね?

(2)防御

スライムは、不定形であることから急所が無く、打撃や切断といった物理攻撃も効きません。
火が弱点のスライムもいますが、巨大な固体に対しては松明たいまつ程度で倒しきることは難しいでしょう。
いるかどうかも分からないスライムのために、油を大量に持ち運ぶのも現実的ではないので、ファンタジーらしく魔法を使って倒すのが、最も有効な手段になります。

魔法禁止エリアのスライムは実際無敵。古事記にもそう書かれている。

(3)戦術

スライムの移動速度は非常に遅い上、攻撃手段は直接接触しかありません。しかし、その欠点を補うためにスライムたちはおおむね隠密にけています。
天井に張り付いていたり、かぎ穴に潜んでみたり、池や沼に擬態ぎたいしたり・・・。
不注意な冒険者を奇襲きしゅうする。アンブッシュからの一撃必殺がスライムの基本戦術です。

また、たとえ奇襲が失敗し攻撃手段が無くなったとしても、あえて攻撃を受けることで相手の装備や魔力をじわじわと削り、勝てると信じて粘りつづけます。

成せば成る!

 

4.小ネタ

(1)不老長寿の薬

中国では、地中から発見される正体不明なナニカの肉塊を「肉霊芝れいし」「太歳たいさい」などと呼び、不老長寿の薬として珍重しています。
言い伝えによると、切れ端を残しておくと再生して何度も食べられるのだとか。豆苗?

近年になってからもいくつか発見例がありますが、不定形で切り込みを入れてもすぐ塞がってしまう再生力があることから、粘菌の一種ではないかともくされています。

生で食べたらバラの香りがしたそうです。正体不明のスライムを食べるなんて、漫画の世界だけだと思ってました・・・。
良い子は絶対真似しないように!

(2)宇宙からの来訪者

隕石と一緒に降り注ぐと言われるスターゼリー。
正体は諸説あり、宇宙から飛来した有機物で生命の起源、未知の生物といったロマン溢れるものから、ネンジュモやカエルの卵といった単なる勘違い説まで様々です。

最近では、水に溶けたポリクルアミド(消臭剤のゼリーのやつ)が、スターゼリーにそっくりだと一部で話題になりましたが、スターゼリーの目撃例は人里はなれた場所や、14世紀頃からもあるので、全てが消臭剤というわけではないのでしょう。

本物?の特徴としては、ほとんど水で構成されており、すぐ消えてしまうことと、硫黄臭がすることだそうです。
本物なら、数億円の価値が出る可能性もあり、一攫千金の大チャンス!

研究がすすめば、実は宇宙生物だったんだよ!なんてこともあるかも知れませんね。