インドの蛇神、ナーガラージャ。
竜王と呼ばれる存在で、たくさんの種類がいます。
仏教における八大竜王も、このナーガラージャが元ネタなのです。
(目次) 1.姿形 2.由来 3.能力考察 4.小ネタ (1)主なナーガラージャたち
1.姿形
ナーガラージャは頭が複数ある蛇、あるいは下半身が蛇の人間として描かれます。
龍が絡みついた人の姿をした仏像もありますが、元は龍(蛇)が本体なのです。
2.由来
インド神話に登場する蛇神をナーガと呼び、その王がナーガラージャです。
非常に数が多く、王だけでも1000体とされます。
(ナーガの種類は、4.小ネタ(1)参照)
ナーガたちは非常に人気があり、仏教にも取り入れられました。
そのためナーガラージャは「竜王」として、お経にも登場するのです。
3.能力考察
ナーガはピンからキリまで多種多様で、仙人の化身という者や、悪魔の一種、創世神話に登場する大蛇まで存在します。
ナーガは強いとも弱いとも言えるのですが、王と呼ばれるナーガラージャのクラスになると、そのほとんどが猛毒があり、水や天候を操る力を持っています。
雨や旱魃、洪水を起こしたり、津波を止めたりなどなど。
自然の恵みや天災を、発生あるいは抑止する存在なのです。
自然の猛威を前に、人間はほとんど無力です。
いずれのナーガラージャを相手にしても、太刀打ちすることは困難でしょう。
4.小ネタ
(1)主なナーガラージャたち
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- カドゥルー
- ナーガラージャ達1000体の母親。
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- カーリヤ
- 蛇王と呼ばれるが、神鳥ガルダと争い敗北する。
故郷にいられなくなり逃げるが、その地で毒の被害を出したためクリシュナ神に踏まれる。
妻の懇願で許しを得て、クリシュナの加護により元の故郷に戻った。 -
- ムチャリンダ
- ブッダの修行を見て感銘を受け、仏教に帰依する。
ブッダの瞑想中、7巻きのとぐろで傘代わりとなった。
別名「7回巻きの藍」 -
- アパラーラ
- 洪水を起こすが、ブッダに懲らしめられ仏教に帰依。
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- アナンタ
- 名は無限、永遠を意味する。インド版ウロボロス。
1000の頭で大地を支えている蛇シェーシャと同一視されており、シェーシャが尾を咥えて輪になった姿がアナンタだと考えられている。
ヴィシュヌ神の乗り物のひとつでもある。 -
- ナンダ(難陀龍王)
- 仏教における八大竜王の一番。
海の主で、密教では弟のウパナンダと共に二大龍王と呼ばれる、雨乞いの龍神。
千手観音の眷属、二十八部衆の一人。
別名「歓喜龍王」 -
- ウパナンダ(跋難陀龍王)
- 八大竜王の二番でナンダの弟。バツナンダとも言う。
別名「亜歓喜龍王」 -
- サーガラ(娑羯羅龍王)
- 八大竜王の三番。名は大海を意味し、天海に住む。
別名「大海龍王」
ナンダ、ウパナンダと仲が悪く、3匹で毒を吐いて戦ったため、海が毒で満たされた。
(シヴァ神が毒を吸い取ったため、世界は助かる)また、娘の一人が八歳で悟りを得て成仏しており、女性や獣、若者でも仏になれると証明した。
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- ヴァースキ(和修吉龍王)
- 八大竜王の四番。宝を意味する。
仏教では、世界の中心にある須弥山の守護者がヴァースキとされる。
日本では過重労働で苦しむ姿が共感を呼び九頭龍大神という名でも信仰されている。またインド神話にも登場し、プラーナ界の地下にある七界、パーターラの支配者でアナンタと同じくシェーシャと同一視される。
ヴァースキは天地創造で乳海を混ぜるため、
神々から言われるまま山に絡みついた所を、両端で交互に引っ張られ、苦しさのあまり毒を吐いてしまい世界を滅ぼしかけたというエピソードがある。
(シヴァ神が毒を飲み込んだため、世界は助かる) -
- タクシャカ(徳叉迦龍王)
- 八大竜王の五番。
インドラ神の友で、別名「狡猾なタクシャカ」
呪詛を聞き届けて、王を咬み殺したこともある。
(王は僧侶に失礼なことをして、その息子に恨まれた)
仏教では「多舌」「視毒」とも呼ばれ、見た相手を殺せるとも言われる。 -
- アナヴァタプタ(阿那婆達多龍王)
- 八大竜王の六番。清涼を意味し、苦悩を持たないとされる。
ヒマラヤを越えた先にある伝説の池のほとり、五柱堂に住む。
この池から四方に広がる川が、世界を潤している。 -
- マナシ(摩那斯龍王)
- 八大竜王の七番で、マナスヴィンが本名。
大きな体、大きな力を意味し、物事を公平に見通すことができる。仏教では須弥山の城を攻めるアシュラたちの起こした津波を、体で受け止めガードした。
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- ウッパラカ(優鉢羅龍王)
- 八大竜王の八番。青蓮華を意味する。
別名「青蓮華龍王」仏教で青蓮華は清浄の例えに使われる。
ブッダの目は紺青色で、青蓮華のように美しいらしい。